2019年4月9日火曜日

けものフレンズ2 感想まとめ

けものフレンズ2 全体的な感想

・まずけものフレンズ2の基本構成は以下の2本立てとなっていると思います。
①テーマとしての「おうち」
②パークで暮らしているアニマルガールと遊びを通して交流しフレンズになってゆく

・そこに以下のようなテーマ、設定で肉付けしてる様に見えます
 (ざっと思いつく範囲で書きましたが他にもあるかも知れません)
③動物と人との関係
④アニマルガール
⑤フウチョウコンビ
⑥世代交代
⑦キュルルちゃんの記憶喪失の謎
⑧ジャパリパークに起きた異変
⑨セルリアン、セルリウムの設定
⑩ビースト(アムールトラ)の謎
⑪イエイヌの謎
⑫キービジュアルにあるサンドスターの柱

①テーマとしての「おうち」

テーマについては「けものフレンズ オフィシャルガイドブック プロジェクトの軌跡」に木村監督のインタビュー内に記載されているのでそちらを参照していただくとして、キュルルちゃんはパークに棲む様々なアニマルガールと出会い交流することで「おうち=自分にとっての居場所」を見出していったのではないかと思います。例えば第8話でマーゲイに「自分の居場所があって羨ましい」と言っていますが、キュルルちゃんはPPPとマーゲイに「誰かを必要としまた必要とされる関係」を見出したのだと思います。
 しかし第9話でイエイヌちゃんに「ご自分のおうちを探すべき」と(一旦は自分のおうちと思おうとしていた場所が)自分のおうちでない事を告げられ、「おうちを探す」事そのものに疑問が芽生えたのではないでしょうか。そこにフウチョウコンビが現れ「おうちを探す」事自体が目的になってしまっていることに気づかされキュルルちゃんの葛藤が始まってゆきます。
 その葛藤を乗り越えた第12話のラストシーンでは、「みんなの役に立ちたい」と明確な意思を持ったキュルルちゃんがパークに自分の居場所を見出したのだと分かります。さらに「もっと冒険したい」と自らの境遇を跳ね除け前進する姿に第1話と比較してずいぶん成長したなと感じました。

②パークで暮らしているアニマルガールと遊びを通して交流しフレンズになって行く

(恐らくファンの大多数を占める)ネクソン版アプリを知らないファンの方に説明すると、ネクソン版アプリの登場時「アニマルガール」と「フレンズ」は以下のように若干意味合いが異なって使用されていました。
・アニマルガール=サンドスターによって動物の特徴を持った女の子
・フレンズ=プレイヤーがアニマルガールと交友を深めることで仲良しになった状態
現状「フレンズ」はアニメからのファンを指していたり、公式も現時点では殆ど「アニマルガール=フレンズ」として使用したりしているので紛らわしいのですが、上の画像のようにもともとは最初から「フレンズ」なのではなく仲良くなるプロセスを経て「フレンズ」になっていました。

 で、その観点で2を眺めてみると、キュルルちゃんは遊びを通してアニマルガールと交流しているのが分かります。遊具で遊んだり、海中遊泳をしたり、紙相撲したり、海でサンドスターを採取したり、かけっこしたり(本人はしていないですが)、フリスビーで遊んだり交流することで仲良くなり"フレンズ"になっていく過程を描いているのが分かります(そして最後は遊びを通してではありませんがビーストとも"フレンズ"になります)。2制作陣がまず描きたかったものはこうしたジャパリパークに遊びに来た普通の子供とアニマルガールとのシンプルな交流(遊び)だったのではないでしょうか。
 ただ2は1期と比べて分かりにくかったとは思います(私も第5話までこのパターンに気づきませんでした)。1期は各話の冒頭で視聴者に対して明確な問題提示を行いそれをかばんちゃんが("人類の叡智"を駆使して)解決する過程を見せるという構成でしたが、2は上記のように「アニマルガールと遊んでいるだけ」で全く別物の構成となっていたため分かりにくかったのではないかと思われます。

③動物と人との関係

脚本のますもとたくや氏もインタビューで答えていますが、2の大きなテーマとして「動物と人との関係」もありました。劇中に登場した野生動物で人間と関係が全く無い種はまずいないので全部といえば全部なんでしょうが、少なくとも以下のようなテーマが各動物に設定されていたと思います。
第3話 バンドウイルカ、カリフォルニアアシカ:人によって調教された動物
第9話 オオセンザンコウ:漢方薬や食料の目的で密猟され絶滅の危機、イエイヌ:ペットとして人と社会的に最も近い動物
第10話 リョコウバト:乱獲で絶滅、ブタ:主に食料として家畜化

 明るい展開の中に第3話のように明確に描かれていたり、ブタのように特に明確でない場合もありますが、これまでわりと曖昧にされてきた人間と動物の関係を視聴者に認識させ考えさせる意欲的な試みであったと思います。

④アニマルガール

3Dモデルは計49体制作されたらしいですが、全体的に等身の高い私の好きなデザインでした。また全てにキャラの個性が出ていたのは中々凄いことなんじゃないかと思います。第5,8,10-12話などキャラがわちゃわちゃしてとても楽しいですがそれもしっかりとキャラ付けがされていたからだと思います。特に第8話はお芝居のオーディションのために3体更に観客として2体、脇役のために合計5体ものモデルを作成しているのは凄いと思います。
 特にトキさんは「アルパカさんの…」を言わせるために1期のモデルの雰囲気に寄せているんじゃないかと思いましたし、恐らく制作陣の中に1期第3話が大好きなスタッフがおりその設定を2にも入れたいという並々ならぬ情熱で投入したのではないでしょうか。

⑤フウチョウコンビ

第9話からの意図的な月の演出を行い満月と同時に登場させており月と何か関係があるキャラクターとして設定されているようです。最初にメディアに露出したキービジュアルも満月だったので、満月に秘められた何らかの力の象徴なのかもしれません。
 第9話で微かに描かれていた人工衛星らしき物体、キービジュアルのアンテナ基地局、フウウチョウの構造色(光=電磁波を取り込み逃さない)など関連があるのなら面白いだろうなと思います。

⑥世代交代

第12話で世代交代に関して新たな設定が提示されています。第1話でサーバルちゃんがかつてののイメージを記憶していたのは、個体が得た記憶や絆のような関係性はアニマルガール化の解除で断絶するのではなく何らかの仕組みによって一部が継承される場合があるということではないでしょうか(ガイドブックでも記憶が完全になくなるとどうかは暈しています)。つまり何かの理由(不慮の事故など)でアニマルガールであるパートナーを失ってもその絆は失われずいつか再会する事が出来るのだと。
 動物(人間を含め)は命と世界を次の世代に引き継ぎ個体としては消えてゆくことで種をつないでゆきます。誰かが愛した相手も自然の摂理に従い例外なく死を迎える。しかし両者の間に築かれた絆は決して消えない。その絆はサンドスターの力によって再び両者を結びつける事が出来る。今回提示された設定はこのような意味が込められている様に思えます。
 ちなみに世代交代の設定が提示されたのはガイドブック第3巻でしたが、当時ネクソン版アプリから変わり果てたジャパリパークを見せつけられアニマルガールがどうなったかもうやむやにされた状態で、自分たちが愛したアニマルガール達がもういないという事実を突きつけられたようなものであったため私には到底受け入れられるものではありませんでした(今でもそうですが)。今回のこの設定は我々ネクソン版アプリユーザーに対する救済でもあるのかも知れません。(私はネクソン版のアニマルガール達は今でも元気にパークを駆け回っていると信じていますけどね!)

⑦以降は考えが纏まっていない為割愛させていただきます・・・

 本編を見終わって全体的に俯瞰すると、アニマルガール達がわちゃわちゃしてとてもけもフレらしい作品ではありました。しかし一方で(恐らく脚本・演出の推敲不足ゆえに)キャラの心理描写やストーリーの展開が分かりにくかったと感じました。というのも上記のような多数の設定を盛り込んでしまったために情報が大量になってしまいそれを上手く伝える事が出来ていないのではないかと。
 例えば②などは第1話から第12話まで通して存在していますが、よほど勘の良い人でなければ1回観ただけでは気づかなかったのではないでしょうか。私は繰り返し観たので幸い気づきましたが、1回しか観ないであろう大半の視聴者は気づかないまま最後まで「よーわからん」ストーリーになっていたのではないかと思います。

また謎も多数残したままであり最低でも以下の謎は本編内で説明してほしかったと思います。
・キュルルちゃんが何故あそこにいたのか?
・ビーストはなぜキュルルちゃんを追っていたのか?
・船型セルリアンの謎


 ではなぜ脚本・演出の推敲不足になってしまったかと言うと、個人的には制作期間が短かったんじゃないかと思います。公式に出ている情報から推測するに2の制作体制は2017年11月から12月あたり、脚本完成は2017年12月から2018年1月あたりではないかと推測します(アニメ業界には詳しくないので完全な素人の推測です)。そこから制作を始めたとして制作期間は実質的に1年程度しかなかったのではないかと予想され、その短期間に大量の情報を詰め込んだため脚本・演出の推敲が間に合わない状態になってしまった(制作陣がけもフレが高じてあれも入れたいこれも入れたいと詰め込んだ結果だと思いたいです)のではないかと考えています(あくまで素人の推測です)。

 しかし仮に上記のような理由であったとしても、ファンとしては完成したものに対してしか評価を下せませんし分かりにくい作品だったという評価は変わりません。何というか素材は本当に良かったのに急いで制作したのは非常に勿体無いなという印象です。各話ともあと5分くらい尺が長ければキャラの心理描写や丁寧な展開が描けるんじゃないかという気がしなくもないので(素人判断ですが)、可能ならBDで救済、もしくは完全版などを制作してほしいと思います。

最後に

アニメ放送中「けものフレンズ2」はどこか彗星に似ているなと思っていました。2018年9月2日に突如我々の前に登場し様々な話題を提供しながら、2019年4月2日未明に最接近したのち数多くの謎を残しあっという間に去ってゆくところは彗星をイメージさせます。また次の彗星が訪れるまで自分の好きなけもフレの世界で楽しみたいと思います。
 2制作に携わった木村監督、ますもとたくや氏、吉崎先生、キャストの方々を始め2制作陣、ならびに製作のスタッフの皆様に対して感謝しつつ感想を締めくくりたいと思います。

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